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(やっぱり……朔には敵わない)
ずっと心に押し込めていた不安な気持ちが一気に外に溢れ出したような気がした。
「あのね……私、朔と結婚したい」
「うん」
「でも、就職したばかりで仕事、上手くこなせてなくて……会社に行くだけでいっぱいいっぱいになっちゃうの」
「うん」
「でも朔と結婚して奥さんとしてちゃんと家庭も守りたいって思っているの」
「うん」
「でも……このまま結婚したらきっとどっちも中途半端になってしまう気がして、でも早く朔に家庭を与えたいって──」
「だから、なんで『与えたい』って言葉が出て来るんだよ」
「え」
「結婚って与えるとか与えないとかっていうものじゃなないだろう」
「……」
「なるんだよ、家族に。家族になりたいから結婚するんだろう」
「!」
「最初っから両立が大変だなんてこと、俺だって解っているんだよ。だけど家族だから、ふたりで乗り越えるんだろうが」
「……」
「何おまえひとりでやろうと思っているの。俺だって紅実と同じなんだよ。ふたりで作って行くから家族なんだろう?」
「……さ、く」
「おまえさぁ、もっと話せ」
「……」
「昔はもっと言いたいこと俺にぶちかましていただろう」
「なっ」
(みんながいる処で何いおうとしているのよ!)
恥ずかしくなった私は慌てて朔の口を塞いだ。だけど容易くかわされて訊かれたくないような昔話をしようとしたから益々応戦した。
そんな私たちを見て朔のお父さんもお義母さんも月子ちゃんも笑っていたのだった。
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