第四章 社会人時代

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ピンポーン♪ 「あ、来たっ!」 鳴ったインターホンで対応する間もなくバタバタと廊下を駆け、慌ただしく玄関へと向かった。 ガチャッと大きな音を立てて開かれた其処には会いたくて堪らなかった人が立っていた。 「やぁ、久しぶり、紅実」 「~~~陽生……ちゃん」 約五年ぶりの再会だった。 17の時、気まずい気持ちのまま別れて以来の陽生ちゃんがすっかり大人の男性になって私の前に現れた。 「紅実、元気そうだ」 「あ、陽生ちゃんこそ」 「ちょ、泣かないで、紅実」 「だ、だって……だってだって~~~」 会うまで不安だった。陽生ちゃんが変わってしまったんじゃないかという怖さが心の何処かに常にあって、私の知っている陽生ちゃんじゃなくなったのかも知れないと怯えていたから。 「こら、再会早々なに泣かせている」 「っ!」 後ろから来た朔が私の体をグッと抱き寄せた。 「やぁ、朔」 「久しぶり。元気そうじゃん」 「あぁ、君も。相変わらずデカいね」 「そういう陽生こそ。なんだよ、無駄に色男になりやがって」 「はは、よくいわれるよ」 朔と陽生ちゃんのやり取りを見ているとまるで昔に戻ったみたいで…… 「ふぅ……うっ」 「え、紅実?!」 「なんで更に大泣きするの、紅実は」 余りにも感慨深くなってしまった私はしばらく涙を止めることが出来なかった。 朔と陽生ちゃん、ふたりが両側から慰めてくれるのがまた一層泣かせる要素になったのだった。
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