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「いやあ、昔付き合っていた彼女が好きだったんでそれでちょっとばかり。先生も読んだことがあるんですか」
「いやわしはもっぱらSFばかりだからねえ。赤江瀑は名前と作風くらいしか知らないんだよ。しかし小路丸くん、やはり人が花になるってのは本当に花になるのではなく、花のように見えるなにかになるということなんじゃないかねえ。そのほうが現実的だと思うよ」
「ところで人参果ってさっき言ってましたよね」篠塚くんが口を挟む。
「そうなんですよ、人が花になるってことのほかに、人参果も絡んできて、というかなにか関係がありそうな感じがして」小路丸は二人に山下との経緯を話し始めた。
「そういうことなのか」と小路丸の話を聞き終わって今井先生が言った。
「西遊記の中に登場する人参果って食べると寿命が延びるというやつですよね。たしか三千年に一度だけ花が咲いて、三千年に一度だけ三十個の実がなるんだけれども、その実が熟すのに三千年かかって、さらに食べごろになるまでは1万年も待つ必要がある、って合計一万九千年もかかるわけだから完全に空想の話ですよね」と篠塚くんが言う。
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