観測 2

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 助手席に張劉帆が座ると山下はアクセルを踏んだ。  「このまま道を西に向かって進んでください」そういいながら張劉帆は車に搭載されているナビに住所を入力した。しばらくしてナビに表示された地図上に緑の線が引かれる。  中心部を抜け出ると建物はまばらになっていく。 「中国といっても新疆ウイグル自治区はもう全然雰囲気が違うんだな。まるでイスラム文化圏じゃないか」車を運転しながら山下が隣の張劉帆に話しかけた。 「はい、新疆ウイグル自治区は中国の一部ですが、ここで生活しているウイグルの人たちは漢民族ではなくウイグル族で、もうぜんぜん別の世界といってもいいんですよ。イスラム教徒の人たちが多いですし。でも政府がこの地方にたくさんの漢民族を移住させたあたりからいろいろと弾圧が厳しくなってきたんです。だから正直言えば僕もこの地方にはあまり来たくはないです。怖いですよ。もちろんウイグルの人も個人個人はとてもいい人ばかりなんですけれど、でもふとしたことで政治がらみの話題になったりすると、こちらはそんなつもりはないですが、弾圧された側の意識というのは表にでてきてしまいますね」 「そうか、それは悪いことをしてしまったな。ウルムチでの仕事に呼んでしまって」     
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