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「いえ、怖いというのは一人っきりの場合ですから。山下さんといっしょならどんな場所でも心強いですよ」
「ははは、うれしいことを言ってくれるなあ。しかしおれはそんなに頼りになるかどうかはわからんが、日本にはおれの頼りになる相棒もいるんだ。今回のこともそいつに協力してもらっているから心配するな」と日本にいる小路丸のことを頭に浮かべたところまではよかったが、小路丸は日本にいて中国にいるわけではない。すぐに助けを請おうとしてもせいぜい電話越しに応援の言葉をかけてもらうくらいしかできないだろう。そんなことを考えたとたん山下の意気揚々とした気持ちは急降下しはじめてしまった。
――まあ張くんの彼女の家に行って様子を探るだけだからなんとかなるだろう。
*
今井先生が人参果を持ち帰った翌日、篠塚くんが小路亭に昼食を食べにやってきた。
「小路丸さん、あれからちょっと人参果について調べてみたんですけど、たしか山下さん中国の新疆ウイグル自治区にいるって言ってましたよね」篠塚くんは小路丸にランチメニューを注文したあとですぐさま昨日の話題を持ち出してきた。
「うん、そうだけど」
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