観測 2

5/8
前へ
/35ページ
次へ
「いえ、そういう意味じゃなくって、新疆ウイグル自治区が中国の中でも中国じゃないというか、そこに住んでいる人は漢民族じゃないってことです。もともとがウイグル族の人たちが住んでいた場所で、そこを中国が支配してしまったから、中国政府の弾圧がひどいみたいですよ。ちょっと調べてみただけなんですが」と篠塚くんが調べたことを小路丸にはなし始めた。  ウイグル自治区は古くはウイグル帝国の征服によってウイグル人の支配下におかれていた。その後モンゴル帝国、清朝と支配する側が変わるのだが、清朝のあとをついだ中華民国が半独立的な領域支配を行い今に至っている。そしてこの地域が新疆ウイグル自治区となったのは1955年のことだった。  反発ももちろんあったのだが、支配する中国側からすると幸運だったのは、しばらくして中国全土で起こった大飢饉の影響がこの地域でも無視できないほどの大打撃を与え中国支配に対する対抗する力が削がれてしまったこと、さらにはこの地の住人たちは中国に対抗するよりもソビエト側に逃亡するという手段を選んだことなどがあって大規模な闘争が起こることはなかった。  しかし21世紀に入るとアメリカ同時多発テロの影響で反イスラムの声が高まり、中国政府のこの地への弾圧がより強くなっていった。 「でも山下さんならどこでも平気だと思いますけれどね。誰とでもすぐに仲良くなっちゃいますから」     
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加