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「そうなんだよね、そういえばこの間も、先輩――」と言いかけたところで小路丸の携帯が鳴った。「ごめんなさい電話、ちょっと出るね。はい、小路亭です。あ、今井先生。どうかしたんですか、電話なんて珍しい」
「小路丸くん、昨日持って帰った人参果なんだけれどな、ちょっととんでもないものだったんだ」
「やっぱり、それで先生の方は大丈夫なんですか」
「ああ、わしのほうは大丈夫だ。心配してくれてありがとう。それよりもだな、あれから昨日、何匹か実験用マウスに食べさせてみたんだよ。しかし食べさせてみたのはいいけれどもどうやって寿命が伸びたのか調べる方法が思いつかなくってな。昨日から延々と考え続けてたら今朝にになってテロメアの解析をしてみたらどうかと思いついたんだ」
テロメアは細胞分裂をするたびに少しずつ短くなっていく。そしてその長さがある程度以下となるとそれ以上の細胞分裂は行われなくなる。細胞分裂が行われないということは新しい細胞が作られないということで生物学的な死を迎える。人参果はこのテロメアになんらかの作用を与えるものではないかという仮説を今井先生は立てた。
「そこで早速、食べさせたマウスのテロメアを採取しようと思ってマウスを見たらだな、食べさせたマウスの全てに昨日まではなかった腫瘍ができていたんだ。癌だよ」
「癌って、昨日の今日じゃないですか。そんなに急になんてならないんじゃないですか」
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