観測 2

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 しばらくして家が見え始めた。山下は家の少し手前で車を止め「よし、行こう」と張劉帆とともに車をおりて玄関まで歩いていく。 「こんにちは。張です。張劉帆です。ムヘンメトさんはいらっしゃいますか」玄関の扉越しに張劉帆が挨拶をする。  待っていると家の中で人の動く音がした。音は近づいてくる。玄関の扉がゆっくりと開き、リズワンギュルのお母さんと思わしき女性が顔をのぞかせた。  「ああ……ありがとう」その女性は張劉帆の顔を見ると糸の切れた操り人形のようにその場に崩れ落ちた。 「大丈夫ですか」と彼女の体を抱え起こそうとする張劉帆の体を横切って山下は家の中に入っていった。 「張くん、おれはリズワンギュルさんの方を探してくる」  扉が開いたときから山下はなにかが腐ったような匂いを感じ取っていた。腐敗、いや化膿したときの匂いに近いかもしれない。そして血の匂いも。足元で倒れている女性の服に染み付いた匂い。  家の中を奥へと進んでいくとその匂いが強くなっていく。  山下の行先にいくつも連なる閉じられた部屋の扉がある。その中で開け放たれている扉がひとつだけあった。  山下は迷わずその部屋の中に入っていき部屋の中を見た。  ――見つけたぜ。 「張くん、お母さんの方は大丈夫か? 大丈夫そうならこっちに来てくれ」
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