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高校を卒業する頃には、幸知は何をやっても良い結果になることに慣れ、何も感じなくなった。
心の底から喜び、楽しみうことができなくなってしまった。
自分はどうやって、笑っていたのだろう。
簡単なことなのに、だんだん思い出せなくなっていく。
運が良すぎる。
ただそれだけのことだが、大抵の出来事に対して心が反応しない。
それでも幸知の心は完全に諦めてはいなかった。
自覚してから、幸知は生活を変えた。
人目を引くような行動を避け、目立ちすぎないように三年間、無遅刻無欠席で高校を卒業する。
コツコツとバイトで貯めた十万八千円の所持金と質素な服一式が入っているスーツケース。それに不本意な気持ちもあったが、祖父が喜んでくれたバドミントンのトロフィーと賞状。これだけを持って幸知は長年過ごした街を出た。
若者が憧れる都会の簡素なアパートで他の女の子と共有し、コーヒーが安くて美味しいと評判のカフェでバイトをしながら、子供の頃からの夢だった女優になるため、オーディションを受ける日々を送る。
女優ならば運など影響せず、実力でしか上れない世界だと、幸知は考えた。
同時にこの頃から意識し始めた。
隣でずっと変わらない姿のまま、何もせずただただ浮いている死神の存在を。
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