芍薬の寺

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「和尚さん、大丈夫かや?」 その声に、和尚さんが目を覚ましました。 そこにいたのは、駐在所のお巡りさんでした。 「…どうしたんじゃ?」 そう呟きながら、和尚さんはゆっくりと体を起こしました。 「どうもこうも、四、五才の男の子が、おしょうさんがおしょうさんが、と言って泣いてたもんでな。こうやって来てみたんじゃ。何事もなくてよかった」 「…四、五才の男の子?…はて、誰じゃろ?…それより、子狐を見らんかったかの?」 和尚さんはそう尋ねて、辺りをキョロキョロと見回しました。 「…子狐?子狐がどうしたんじゃ?」 「母狐を亡くしての、不憫じゃったから、飼っておったんじゃ」 「さあ、…見とらんな」 「…どこに行ったんじゃろ…」 和尚さんは顔を曇らせました。
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