芍薬の寺

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夜になっても、子狐は帰って来ませんでした。 「…どこに行ったんじゃろ…ひもじい思いをしておらんじゃろか…あっ!」 と、その時です。和尚さんはふと、ある言い伝えを思い出しました。 それは、狐は一度人間に化けると、死んでしまうという迷信でした。 不吉な予感が、和尚さんの脳裏を掠めました。 「…巡査が言っておった男の子とは、もしかして…」 和尚さんは大急ぎで、生い茂る芍薬の葉っぱを掻き分けました。
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