高校2年、冬。

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高校生になってからこの生活を始めて、それでも部活に夢中の間は、どちらかの家には帰っていた。 部活がなくなって、空っぽになった気がした。 学校が終わるとバイトに行き、気分で泊まる所を決める。 そんな毎日。 不良でもないし、むしろ品行方正。 ただ、一定の住まいが決まってないだけ。 バイトを終えると裏口に武がいた。 「よっ!お疲れ。」 「何にも奢らないわよ?」 「人聞き悪いな…送ってやろうと思っての事だろ?」 「今日はいい、すぐそこのファミレス。」 「危なくないのか?」 「結構、似たような子いるよ?武も早く帰んなよ?明日、抜き打ちテストあるよ?」 「げっ?何?」 「英単語、小テスト。受験に向けてちょいちょい実施するらしい。」 「やべぇな…。じゃあ気をつけろよ?また明日、電車でな。」 透子は笑いながら手を振る。 「そっちこそ、気をつけて。またね。」 とりあえずファミレス向かう。 寝床を確保して、ひと安心したところで、薬局が閉まる前に向かう。 歯磨き粉やら生活用品が切れた所だ。 洗顔料や化粧水は最低必需品だ。 ファミレスを出て歩いていると、大人の男性数名とぶつかりそうになった。 スーツの男性の肩に腕を回して、二人の男が話をしながら歩いていた。 スーツの男性は気弱そうな普通のお父さん風で、30代後半かな?と思った。 その後ろにはさらに若い、「明らかに」という感じのハワイアン風の派手な長袖のシャツを着て、二人が三人のスーツ姿の後ろを歩いていた。 (借金取り? ただの仕事仲間かな?) どの道、危ない人でも助けようがない。 頭を下げて、横をすり抜けた。 後ろの二人の嫌な視線を無視して早歩きした。 この時が恐らくは、私の人生のターニングポイントだったと思う。 ゆらゆら、ふらふらしたのんびりな私の人生が、まさかこんなバイオレンスに生きる事になるとは、思いもしていなかった。
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