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陰る
梅雨の中、剣道場で智生の気合の声が聞こえた。
外にいてその声を聞きながら少し羨ましいなぁと思っていた。
たくさんの差し入れをドアの前に置き、透子は静かにドアの前から離れた。
剣道場から続く通路には雨が入らないように天井があった。
そこからすぐ見える庭には、もう梅雨なんだなと思うほどたくさんの雨が降っていた。
校舎のドアが開き通路に武の顔が見えた。
「よっ!智生の練習、見に来たんだろ?入らなかったのか?」
「うん。邪魔になるといけないからね。それに雨が結構ひどくなりそう。今日は早く帰りたいんだ…なんか最近さぁ…また誰かに尾けられてるみたい。全然、覚えないんだけど…。」
ため息をつき透子は通路の真ん中で、中庭を見ながら言った。
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