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「あぁ、もう!」
住宅街からすこし離れた、うっそうとした森林公園。
手汗で湿った地図を頼りに、かれこれ2時間さまよっている。
1年中、あまり人が立ち寄らない この公園。
樹々が光を遮って妙に陰気なのが理由だと思う。
……いや、兄と来てた頃はそうでもなかったかも。
まぁ そんなこと、どうでもいいか。
とにかく、今は帰りたい。
その想いとは裏腹に、時針は着々と真下へむかう。
闇に少しずつ塗り潰される森。不安があたしの肝を冷やした。
「無理!
絶対に無理!無理無理無理ぃっ!」
出口がわからないわけじゃない。
この公園は狭いので、出ようと思えばいつでも出られる。
なのに、どうして『無理』かというと……。
「なにが……
なにが『子供のころ木の下に埋めたタイムカプセルを探しています』だよ!
どの木だよ! 手当たり次第に探せってか!? んなアホな!」
あたしは いわゆる『探偵助手』で、いまは『ご依頼』の最中だから。
そうなんだけど……。あまりにヒントがなさすぎる。
そもそも依頼主が誰かすら知らないし!
「……もう帰っちゃおっかな
疲れたら帰ってもいいって言われてるし━━」
そう呟いた、その矢先。
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