迷探偵、皆を集めて

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「さて」と私は集まった人々の顔を見渡した。お酒のケースを逆さにしてその上に乗った私に、買い物客の視線が集まる。探偵の醍醐味だ。 「まず、平成のH、昭和のS、大正のT、明治のMは除外だ」  当然だ、という顔の観客に更に言う。 「IとLとOもない」 「どうして?」と彼が聴く。  ケースに乗っている私よりも背が高いのは癪に障るが、冷静に答える。 「数字の1と0に見間違う。CとFもないな」 「えー、書きやすそうだけど」 「バカだな、キミは。ヘボン式のローマ字表記にCとFは出てこないし、そもそもF1とか書かれると勘違いすることもある」 「ああ、じゃあ、同じ理由でJとGとKもないよね。サッカーと競馬と格闘技だ」 「キミにしては上出来だが、Rもない」 「あ! お笑いの」  私は厳かに頷き、A4ノートサイズのホワイトボードにアルファベットを書きなぐる。 「紙のサイズに使われるAとBもない。残るはD、E、N、P、Q、U、V、W、X、Y、Zだが」  QとV、Xを消す。 「これらは日本語にはない発音だ」 「となると、D、E、N、U、W、Y、Z……」 「キミならどれを選ぶかね?」と水を向けたが。 「うーん、W、かな。なんかカッコ良くない?」  もっと推理しろ、俗物め。     
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