第3章 7つの関門の試練 最終節

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 二人の乗ったベッドは航宙船[レープレ]号のテンソル転送装置の中に出現し、サリタル皇帝をはじめとした皆が駆け寄り、二人を船の病室に運んでいった... ...そして、  数日後、[レープレ]号は第二番目の試練が待ち受けるラプラトレグ恒星系のヘリセ・デアリカ星の近くまで来ていた。 [レープレ]号のメインブリッジでバーチャルスクリーンに広がるヘリセ・デアリカ星を見つめる二人の男の姿があった。 「ラビケン!お前は前回の試練を良く乗り越えた!...だから今回はサブリナとともに1回休みだ」  サリタル皇帝はそう言いながらハイパーマジックを使って、左手に持つ二つのダイスの7と12の目をそれぞれ1に書き換えた。 「父上!いいのですか?ご自分の命を危険にさらす確率が増えますよ」  ラビケンは驚いて父であるサリタルを見た。 「ふむ...それもまた一興だよ。ラビケン。そんなことを怖がっていてバスタブ帝国の皇帝が務まると思うか?」  サリタルも息子のラビケンを見て言った。 「しかし...もし、父上に何かあれば、今回の試練のすべてが水泡に帰します」とラビケン。 「いや、私はそうは思わんよ」  サリタルは何故か自信を持ってそう答えた。 「この試練が果たされた後の最終の目的は、私がタリーナ姫と結ばれることでは無い」  サリタルは腰に手を当ててスクリーンに映る青く美しいヘリセ・デアリカ星を見つめた。 「誰が生き残るにせよ、試される我らの誰もがバスタブ星の民の復興を必ずや成し遂げることを願っている。それが我々の最終の目的であり、タリーナ姫の母君の王女の目的でもあるのだよ」  そう自信を持って話す父の真剣な横顔をラビケンは見つめ、そして答えた。 「はい。父上!」 「それに、もし私がいなくなっても、お前という新しい王と王女がいることだしな」  サリタルはさりげなくそう言った。 「は...はい!父上にはサブリナを妻に迎えることを、いつ許しを請おうかと...」  ラビケンは少々とまどいながら父を見た。 「なに、許しもなにも、私は以前からそうなることを願っていたのだよ」  サリタルのその言葉に、ラビケンは驚き、今まで起こったあらゆる出来事が、実は父がひそかに目論んだことであったことを理解し、いざというときに情けない皇帝(父親)であったという思いはすべて吹き飛び、父に畏敬の念を抱いた。 「そうだったのですね...父上。ありがとうございます!」  ラビケンの言葉に、サリタルは彼の肩に左手を回し、その左肩をやさしく2,3回叩いた。  スクリーンに広がるヘリセ・デアリカ星は、無限の青い可能性を秘めているように、キラキラと輝いていた。 「さあ!勝負といこうじゃないか!」  サリタルは右手に持ち替えたダイスを握りしめ、そのこぶしを高くつき上げた。  THE END
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