第1章 バスルーム星の攻防

4/13
前へ
/38ページ
次へ
 ナタロン・トローン博士は、バスタブ帝国科学省の主席科学顧問であり、彼女はいつもお気に入りのDNAメタトロン・ガンを左手の小指にはめ込んでいるのであった。  DNAメタトロン・ガンって何? と思った人は、[銀河テクニカル大辞典・別巻]の2853頁と見ると良い。簡単に解説すれば、DNAの中にあるタンパク質とA、T、C、Gの情報を瞬時に解析し、生体にとって有害な部分を無害な構成に置き換えてしまうという働きをする装置である。   「皇帝陛下!」ナタロンは逃げ腰になっていた近衛兵ナズとビイの首に両手でラリアットをかませつつ、そのままスルーして、サリタル皇帝とナキナル第七王妃が乗っている巨大な金属円盤床の上に飛び乗った。(金属円盤床は30cmほどの高さで宙に浮いているのである) 「おお、ナタロン博士か。このビンの中身の正体は分かったのか?」皇帝は片手を上げ、喜びの表情でナタロンを出迎えた。 「...その前に皇帝陛下...ビンを片手でクルクル回すのはやめて頂きたいのですが!」ナタロンは毅然として言った。 「おお、そうだな」皇帝はビンを回すのをやめると静かに宙に浮かぶ小さな円盤の上に置いた。 (この円盤はテーブルであり、やはり50cmほどの高さに浮かんでいる) 「古代都市遺跡の文字を直訳すると...」博士は話し出した。 「確かにバス・フレーバー・アンド・クリーナーなのですが、その名称の本当の意味は別のところにありました」 「なんだって?バスタブに入れる入浴剤の一種ではないのか?」皇帝は本気なのか、とぼけているのか、わからない発言を返した。 「!...違います!...驚かないで頂きたい。そのビンの中身は究極の最終兵器です!」博士は言い放った。 「!!なんだって!!さ、最終兵器?!」さすがの皇帝もびっくりし、さっきまで[最終兵器のビン]でジャグリングをしていたことを後悔した。  青ざめた皇帝が宙に浮かぶ玉座に腰を落とすのを待って、ナタロンは再び話し始めた。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加