第1章 バスルーム星の攻防

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さて、サブリナの必殺の水平打ちを受けたラビケン王子はどうしたかって?  チョップの衝撃でのけぞり、空中でとんぼ返りを2回打った後、半重力ソーサーのフェールセーフ機能により、静かにあおむけとなり円盤床の上に倒れ込んだ。  すると、ナタロン博士がそそくさと駆け寄り、口の広い袖から取り出したグリコーゲン・マイクロ・プランジャーを王子の左肩に当てて注入したのである。  (...グリコーゲンなんちゃらって何? そう思ったあなたは賢明な方です。  これは[銀河テクニカル大辞典シリーズ]の付録の702頁の欄外に小さく載っています。  生体の血液中の血糖値を瞬時に解析し、最も適切なスーパー多糖類を注入してくれる注射器です。)  王子はハッと目を覚まし、「覚えてろよ!サブリナ!」との捨て台詞を残して、コソコソとその場を後にしたが、「あぁ。待ちなさいラビケン王子!」とナキナル第七王妃が息子の後を追いかけて行ったのである。 ...... 「...皇帝陛下、[最終兵器]をお預かりしてよろしいでしょうか?」ナタロン博士は、サブリナが再び円盤テーブルの上においたビンを、右手で示して言った。 「うむ。十分気を付けて管理してくれ」皇帝は自分が[最終兵器]でジャグリングしたことは無かったことにした様子であった。 「では...」博士がビンを(つか)もうと、手を伸ばしたその刹那だった。  ビンが消えた!! 「えっ!?」とナタロン。 「おっ!?」と皇帝。 「あっ!!」とサブリナ。  三人は不意に大きな影の中にいることに気づき、上空を見上げた。  そこには八角形をした巨大な薄ピンク色の飛行物体が浮かんでいた。 「[サイシュウヘイキ]ハ、ワレワレガ、イタダイタ」バスルーム星の大地を震わせる超低周波を変調させた奇妙な音声が聞こえると、八角形の飛行物体は途方もない速度で上昇し、エメラルドグリーンの空の彼方に消えた。
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