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「弱点? それはなんだ」
「馬超の猜疑、妄執の念が強いところでございます」
「妄執の念?」
「かの馬騰との事とて馬超の妄想が狂気に至っているのです。あの者はとても思い込みが激しい」
「……ううん」
劉備は心当たりのある様子で唸る。
「この戦い。我が君もお察しの通りこの戦。勝敗を分けるのは兵と兵の質でなく、大将と大将の意志の強さにございます。敢て張飛、張郃、陳到、高覧に馬超ばかりを狙わせ、韓遂との戦いを避けさせた事をそろそろ馬超は疑い始めることでしょう。しかし、まだその種火はごく小さきもの。この戦いは我が君の辛抱にかかっております。敵の状況、色に変化が表れるまでは耐えねばなりません」
「……」
そして、それから十二日目のこと。
この時に事態は急変した。
展開が進んでいくにつれ、遂に窮状に陥ったのだ。
陥ったのは馬超の方ではない。
劉備の方であった。
その日まで、馬超の攻撃というのは実に堅実なものだった。
壁となる張飛を相手に、じわりじわりと先をとっていったのである。
張飛と馬超の部隊には、大きな兵数差があった。
士気では張飛が圧倒していたが、馬超本隊には多く見て三万の兵力があり、四千程度ある張飛隊のおよそ七倍以上であった。
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