銅鑼の音

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この型は掎角(きかく)の計であった。 掎角の計とは、張飛隊の首尾に配置し、馬超、韓遂の両軍にて挟み込んで屠る策略である。 部隊を指揮する張飛がこの型に嵌った事に気付いた時には、もう既に馬超は背後から槍を向けていた。 「くっ……挟み撃ちかよ!」 張飛はすぐに四方円の陣を組ませて迎撃に当たったが、兵力は残り僅か。 そこへ長槍を持った馬超が、 「全軍、速やかに敵を駆逐せよ!」 剣を揮って号ぶのである。 張飛隊は必死に奮闘するも、兵は削ぎに削がれ、まもなく撤退した。 「くっ、覚えてやがれ!」 さて、均衡は崩され、戦局は徐々に決着の色が映えてきた。 馬超は張飛撤退後、韓遂の部隊と合流し、陣を組みなおした。 張飛はその間劉備本隊の方へ逃げていたが、馬超は討ち取ろうとはしなかった。 もっと大きな獲物が敵の陣中奥深くにいると知っているからである。 「劉備、今日が貴様の命日となるだろう。行くぞ!」
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