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この緊張のなか、劉備は振り向いて、
「皆の者、武器を下ろせ」
仕方なく言った。
将はにやと笑った。
「賢明な判断だ」
「……」
「流石は英雄劉皇叔」
「冗談を……」
男は手を差し伸べ、
「さあ、奥に我らが主の城がある」
そう言って兵を連れ案内した。
城までの警備は厳重であった。
常に歩く劉備の両隣に兵士が並び、各位置ごとにその兵士が入れ替わった。
背後には十人近い兵士が固めており、劉備が逃げようとすれば忽ちそれらが握っている戟の一突きを受ける羽目になるだろう。
やがて朝日が全域に伝わり、遠くの方まで見渡せるようになった。
市場が近くにあったので劉備はそちらを見つめた。
「ほう……」
内心、異民族の自治区というのだから漢の街と比べて見劣りするだろうと思っていた劉備。
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