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玉座に着くと、呼廚泉と目が合った。
呼廚泉はまだ若かった。
肥え太ってはいるが、武技の腕に覚えがありそうな精悍な目をしていた。
於夫羅が高貴な臣の目とするなら、呼廚泉は荒々しい若武者の目である。
劉備は玉座の前に立つと穏やかに自分から一礼した。
それと同時、騒々しい左右の重役連中も、しんと黙って照覧した。
どうやら、この呼廚泉の判断にすべて委ねられているらしい。
呼廚泉は礼をされると、軽く動かす程度に頭を下げた。
そして、薄く笑みを浮かべた。
「ふん、流石は劉皇叔。噂通り礼に篤い人だ」
低く、それでいて聞き取りやすい洗練された人の声だった。
この呼廚泉は於夫羅の弟だという話だが、なるほど。
話は通じそうな、しかし堂々とした佇まいは兄に似るところがある。
呼廚泉は言った。
「あなたをこういう手荒い真似で召したことについては、あなた自身がよく知るところだと思う」
「馬超か」
「いかにも。馬超はあなたの首に巨額の懸賞金もかけている」
「……」
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