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「慰謝料? お前はバカか? セックスを拒否されて傷ついたのは俺の方だぞ? 慰謝料を請求するとすれば俺の方だ」
「私だって、しつこくセックスしたいって言われて嫌な思いをしたわよ!!」
「だから、そんな抱かれたくもない男と一緒にいたって仕方がないだろう?」
「あなただからセックスしたくないとかじゃなくて、単純にセックスしたいっていう気分になれないのよ」
私たちの話は平行線を辿るばかりだ。セックスに対する考え方や感じ方が違うのだから、仕方がないといえば仕方がないのかもしれない。そういう意味では、夫と私には大きな性の不一致があり、これ以上はやっていけないということになるのかもしれない。だけど、やっぱりセックスが全てじゃない。セックスにばかり焦点を当てて話をするから、話が平行線になるのだ。私は話題を変えることにした。
「娘はどうするのよ? 父親としての責任を放棄する気?」
「そんなことをするつもりはない。養育費はきちんと払う。それに、必要があれば、幼稚園や学校の行事にも参加する」
「だったら、あなたがあの子を連れていけばいいじゃない」
「それはできない」
夫はきっぱりと言った。
「何でよ?」
「祐奈と話し合った結果だ。子供は引き取れない」
「勝手なことばかり言わないでよ!!」
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