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目が覚めてカーテンを開けると、朝の柔らかい陽光が部屋の中に射し込んでくる。空は真っ青に澄みわたり、雲ひとつない。絶好の入学式日和だ。
私は娘を起こし、準備をさせ、娘の新しい学び舎へと向かう。小学校までの道は桜並木で、ちょうど満開になった花で、淡いピンクのトンネルが出来上がっている。桜を見ると、どうしても離婚したときのことが脳裏に蘇ってくる。夫が出ていったあの日も、こんなふうに桜が満開だった。ふと、頬が濡れるのを感じた。知らず知らずのうちに、目から涙が溢れ、頬を伝っている。私はハンカチで涙を拭い、それを気づかれないように俯き気味に歩く。
小学校まであと半分くらいという所まで来たとき、突然、娘が私の手を離した。
「パパ!!」
そう声を上げた娘が駆け出す。顔を上げると、道の先にスーツ姿の夫が立っていた。私は娘を追って、夫の所まで行く。
「今日はわざわざありがとう」
私は夫に頭を下げた。
「娘のためだし。それより、これまでなかなか顔を出せなくて、こっちこそごめん」
「今はどうしてるの? 新しい奥さんとは上手く行ってるの?」
「いや、一人だよ。結局、祐奈とは結婚しなかった。あいつ、セックスできれば相手は誰でもいいって女で、俺と一緒にいながら、何人もの男に抱かれてたんだ」
「そうだったんだ」
「どうやら俺は女運がないらしい」
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