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娘が生まれてからは、子育てで睡眠不足なことも多く、いつも疲れ気味で、性欲は全く沸かなくなった。義務とか、責務とかで夫に抱かれる余裕などどこにもない。そんな私は、夫からの求めを、やんわりと断わるようになった。最初は五回に一回は断わる。そのうち、三回に一回から二回に一回は断るように。セックスを断わる回数は、確実に増えていった。
確かに、夫がよく飲み歩くようになったのはその頃からだった。帰ってくると、いつもスーツから香水の匂いが漂う。そんな夫に、一種の嫌悪感を抱くまでにそれほど時間はかからなかった。そうなると、余計に夫と体を重ねることなど考えられなくなる。私たちは完全な悪循環に陥っていた。
娘が生まれて半年ほど経ったある夜、ひどく酔っ払った夫は、帰ってくるなり私の体を求めてきた。酔っているせいで声が大きいものだから、やっと寝かしつけた娘も目を覚まして泣き始める。私の苛立ちは頂点に達し、我慢の限界を超えた。
「帰ってくるなり何なのよ!! いつもいつも、セックス、セックスって。子育てで疲れてるのにそんな気にもならないわよ!!」
私は怒りに任せて大声を上げる。だけど、そんな私の言葉に、夫も怒りを覚えたらしく、急激に顔つきが険しくなる。
「何でも子供を理由にするなよ!!」
「何よ!! 毎晩のように飲み歩いて、ほんの少しだって子育てに参加してもくれないくせに!!」
「セックス拒否ってばかりいられるのに、どうやったら手伝おうって気になれるって言うんだよ!!」
私は夫の放った“手伝う”という言葉で、更にヒートアップした。
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