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高校二年 ─春─
また恋の季節が訪れました。
「ね………ねぇ、少し話があるんだけどいいかな」
それは放課後のことです。
高校二年になりいつもなら1人でさっさと帰ってしまうのですが今日はなぜか一歩が出ず、薄暗い教室で座っていました。
スマホでメールが来ているか確認したり……返信したり………。
すると後ろから声をかけられました。
今年はないと思っていたのに………そう思いながら振り向いてみると……、
「えっ……………」
そこには見慣れた人間がいたのです。
「すぎ………さわ……くん?」
私の初恋の彼が動揺した面持ちでこちらを見ていました。
「あ………いっ………いいよ……」
多分火が着きそうなほどに私は赤くなっていたと思います。いつもと違って変に意識してしまっているせいか、
彼の顔を──、
目を──、
見ることはできませんでした。
「あ……あ……、ここでいいか?」
「う……うんいいよ」
動揺を隠すように教室を見渡して答えます。
「あ、あのさっ!」
顔を見ないのはさすがに失礼と思う私は、覚悟を決めて彼の顔を見上げます。
「うん」
彼の目はまっすぐ私の視線にあわせてきます。
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