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普段ならすべての音に埋もれてしまっている時計の秒針が刻む音もうるさく聞こえます。
私が話を聞く立場なのに心臓の鼓動は落ち着くどころが加速して体は完全に固まってしまっています。
鼻で息することすら忘れて自然と口が少し開くのです。
「ずっと、す………」
見つめられている私の方が、何故か頭が真っ白になっていく感覚がありました。
「また友達からでもいいからっ!つきあ………」
「ふっ!………なぁにそれぇ」
「また友達から」という言葉で私の心は平常運転に戻りました。
思わず彼の言葉を消すように笑ってしまいました。
「また友達からって、もう何年一緒にいると思ってるの?」
「あぁ、まぁそ……そうだよな」
「そうだよ~~。でも、まぁ…………そういうところが──」
みるみるうちに彼の顔が赤く染まっていくのがわかりました。
夕焼けに負けないほどに……。
「また友達から……ね」
「あっ……、もうそれは忘れてくれよ」
「じゃあ」
もう恥ずかしさもすべて吹っ切れたように席を立ちます。
そのまま私は彼の手をやさしく掴みました。
「これで恋人なのかな??」
「お……おう、そんな積極的な奴だっけ」
「友達なのにまた友達からなんて言った人に言われたくありません!」
退屈な日々にさようなら。
私は心のなかで密かにそう言いました。
「手……熱いね」
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