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口づけはポケットにしまえない
高校二年 ─夏─
突然に起きた告白から3ヶ月ほどが経ちました。
「ちょっと寄って行くか?」
「うん」
帰り道にある喫茶店。
学校から近いということもあり学生の溜まり場になっている。
さすがというべきか、学校内の情報伝達スピードは異常でもう私たちのことは知られてします。
「あ、そこ空いてる」
「おっ、そこにするか」
周りが私たちを見る目にはだいぶ慣れてきました。
最初のころは堂々と手を繋ぐことすらできませんでした。
でもなぜあの時は繋げたのかはその場の勢いです……。手を繋ぐと今でも少し緊張します。ただそれ以上に彼が動揺していることがよくわかるので嬉しいのです。
今まで普通に話してきた相手でも関係が変わると初対面のようになってしまうのには自分でも驚きです。
「今日はいつもより混んでるね」
「まぁ、金曜だしな。みんな考えることは同じってことだろ」
他のテーブルは笑いあったりしている中、
「……………」
「……………」
私たちは静かです。
テーブルに置かれた炭酸を片手に喉を鳴らしながら──。
私たちの関係は簡単に言えば進展していません。
手を繋ぐことはしていますがそれまでなのです。
これを思っているのは私だけではないはずです。
このような関係になってから誰もが通る道。
大きな大きな扉の前に私たちは立っています。
口づけという扉の前に…………。
「……………」
ただ、私からそれを切り出すというのはしたくないですし、そういうシチュエーションにまで発展しないというのが現在の私たちです。
「もう3ヶ月だね。あれから」
「早いな……」
「私はまだ友達?それとも彼女?」
「そ………そりゃ彼女だ……よ。まだあのときの事を突いてくるのか」
「そうだよ?一生忘れることはないからね」
というように遠回りしから揺さぶっては見るもののなかなかうまくはいかず……。
でもこうして彼をいじるのは楽しいのでいいのですが。
そして、日は止まらず落ちて行くのです──。
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