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杉澤健汰
「そろそろ帰ろうか」
俺は松塚蒼と付き合っている。
告白なんてしたことはなかったため、あのときの言葉はいまだにやってしまった感が残る。
その証拠に彼女からずっといじられる始末。
もう告白なんてしなくない………と言うくらいにトラウマである。
「手………繋ごう?」
「あっ、はい。すみません」
そんなこんなで俺は彼女に頭が上がらないのである。
今でも手を繋ぐと心臓の鼓動が爆音を放ち始める。繋いだ手を伝わって彼女にバレてなければいいのだが………。
「……………っ」
「ん?」
告白から3ヶ月。
当たって粉々に砕けるつもりが、まさかあんな予想外の言葉で返されると思っていなかった俺にとっては毎日が夢のようで、本当に夢で終わりそうで怖い。
しかし、そんなに夢のような現状で欲張りな事を言うと一歩踏み出したい。
最近、手を繋いで歩いていると思ってしまい黙って彼女を見たりしてしまう……。
唇を奪いたい。
と………。
ただ、彼女の事を考えるといきなり誰かが見ている中では最悪の場合機嫌を損ねるだけでは済まされなそうな予感がする。
そういうシチュエーションにならない。
いや、彼氏としてそういうシチュエーションにしなければならないと思うがどうしたら良いかわからない……。
彼女はそのことについてどう思っているのだろうか………。
『そういうところが大好き』
その言葉を信じて踏み出していいのか不安で仕方がない。
口づけすることによってそれが俺にとってのハッピーエンドとなるのか、バッドエンドと終わるのか、まぁどちらも終わっている気がするがその辺は神のみぞ知る。
「じゃあ、また………明日」
「おう、じゃあな」
彼女が玄関のドアの向こうまで行くまで見届けて帰路につく。
「はぁ…………………どうすれば………」
変に色々気にしすぎなのかもしれない。
実際、告白からの1週間は彼女に告白したりした男子からの視線が全身にぶっ刺さった。
クラスが別というのは寂しいということもあるのだが、逆に考えると周りから弄られないということに関しては助かっている。
「ただいま~~」
やがて日は落ち、月が顔を覗かせる……。
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