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「もしかして君、声が出ないの?」
俺の問いに、彼女はこくりと頷いた。
『服、弁償します』
彼女から見せられたスマホの液晶画面を見ながら、俺は思案した。
「このスーツ、けっこういいところのブランドだから、高いよ?」
嘘だ。そこらのスーツ店で適当に見繕っただけのものである。
女の瞳に一瞬、動揺が走った。
「スーツを弁償する代わりにさ、今度、食事に付き合ってくれないか」
幸い、いまは指輪を外してある。
俺の提案に、彼女は少し躊躇う素振りを見せた。
「彼氏とかいる?」
『いえ、いませんけど……』
「それなら、なにも問題ないでしょ」
半ば強引に約束を取り付ける。
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