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彼女は穂波と名乗った。
汚れたスーツとシャツを盾に連絡先を交換すると、俺はふと気になったことを尋ねる。
「なあ、前にどこかで俺と会ってないか?」
女はきょとんとしたあと、スマホをぽちぽちと操作する。
『ナンパのテクニックですか?』
「違う違う。そんなんじゃないって」俺は笑ってかぶりを振る。「俺の気のせいみたいだ。まあ、そうだよな。君みたいな可愛い子と会っていたら、絶対に忘れるわけがないし」
食事先に選んだのは、都内にあるフレンチレストランだ。オシャレな外観で、価格もリーズナブルであることから、女子にも人気のお店だった。
約束の日、俺は精一杯おしゃれをしてデートに臨んだ。
食事の最中、穂波は当然のことながら一切しゃべらなかったが、それでも俺は、こんな美人と一緒にいられるだけで気分が高揚した。このままホテルに連れ込みたかったが、それはまた今度のお楽しみとする。
穂波とは、食事を終えると、別れた。
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