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彼女は甦る
どん、と身体に衝撃が走る。誰かがぶつかってきたのだ、と思ったときには、持っていた珈琲がコップからこぼれ落ちていた。グレーのスーツとその下のワイシャツの袖口にかかり、茶色いシミが広がる。
都会の大通りにあるカフェのオープンテラスでの出来事だ。面倒なクライアントとの打ち合わせが終わり、ゆっくりコーヒーブレイクに洒落こもうとした矢先のことだった。
俺は思わず舌打ちをしようとしたが、相手の顔を見て引っ込める。どストライクな外見の女だったからだ。
俺はじっとりと彼女の全身を上から下まで舐めるように見た。さらりと肩まで伸びた濡れ羽色の髪。線が細いわりに、出るところはしっかりと出ている。服の下からのぞくスラリとした生足が、俺の目を引きつける。どこかのモデルだろうか、と思うほど綺麗なスタイルだった。
女は何度も頭を下げてきた。しかし、どういうわけか、謝罪の言葉がない。いくらか不審に思っていると、女がスマホを操作し、画面を見せてきた。そこには『すみません。前方不注意でした』と文字が打ち込まれていた。
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