いまさらね

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 昼休みに真由美から連絡があり、どうしても寿司が食べたいから付き合えと言われた。別に仕事が立て込んでる訳でもなかったし、俺に断る理由はなかった。 「そういえば、『たてわき』に行くのも久しぶりだよな。いつ以来だっけ?」 「去年の夏のボーナス以来かな」 「そっか。もうそんなに空いてたんだな」 「なに常連みたいに言ってんのよ。わたし達二回しか行ったことないじゃん」  それもそうだ。初めて行ったのは、お互いの初任給が出た二年前だった。大人の世界を覗いたようで、緊張していたのは今でも覚えている。  真由美とは小学校から大学まで一緒。筋金入りの幼なじみだ。俺の右隣にはいつも真由美がいた。だからといって、付き合ってる訳じゃない。あんまりも自然になりすぎていて、そんな感情は湧かなかった。  真由美はいつも俺の付き合う女の話を聞いてくれた。良かったねに始まり、別れれば慰めてもくれた。  そんな真由美の恋愛話を聞いたのは、一年前だった。ちょうど今時期。今日よりも暖かくて、桜も八分咲きだった。  聞いてもらってる側から聞く側にまわったのは初めてだった。その時素直に良かったなと言えたのは、俺にも彼女がいたからだったのかもしれない。まあ、心に余裕があったんだろうな。  それからも、回数は減ったが、今までの付き合いが変わるわけでもなく、時間が合えば会っていた。でも、不思議とお互いの相手を紹介するでもなく、話の中だけの存在だった。  俺はあっという間に終わってしまったけど、真由美は順調に続いている。決してのろけることはないが、幸せそうな雰囲気を感じる。だてに腐れ縁じゃない。それくらいは分かるさ。
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