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「何やら隣が騒がしいな?」  担任の千葉筑摩がムッとした顔になった。元柔道選手だ。  銃声が響いた。  生徒たちが悲鳴を上げる。 「おまえら絶対に教室から出るなよ?」  千葉は廊下に出た。  おばりよんが現れた。  銃声はまだ続いている。  小泉はさらに3人射殺してケルベロスを召喚させた。  ケルベロスは階段を上がって2階へと向かった。    1年5組の毬村将暉は妖怪に詳しい。  夜、藪の中を歩いていると、いきなり「おばりよん」と叫びながら背中におぶさってくる。そしてその体の小ささに似合わずどんどん重くなっていき、簡単に離れなくなるとされる。『越後三条南郷談』では、「ばりよん」が夜の通行人の背中に飛び乗り、相手の頭を齧るとされ、そのために夜道を歩く際には金鉢をかぶると安全ともいわれた。「ばりよん」は「負われたい」を意味する方言。  昔話として語られていることもある。ある者が化物の現れるという場所に出かけたところ、「ばろんばろん」と声がするので「負(ば)れたかったら負れろ」と言うと、重たい何者かが背に乗り、仕方なく背負ったまま帰宅すると、それが大量の金になっていたという話である。似たものでは、「おぶさりたい」と夜泣きしているものを背負って帰ると、黄金に変わっているというものもある。  恐怖心を示さない豪胆な者が富を得るという意味では、赤子を抱いた者が剛力を授かる「産女」の話や、天草諸島で武士姿の者との力比べに勝つと大金を得るという怪異「金ん主」との共通点も指摘されている。  将暉は魔法のチョークを使って透明になった。敵をある程度倒すと、書いた文字がリアルになる能力も秘めている。  さすがの元柔道選手も怪物を背負うことは出来なかった。身動きが取れなくなった彼を小泉は撃ち殺した。 「アンタがいなくなれば代わりに教鞭をとることができる」
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