再び老俳人

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 老俳人は長い長いため息をついた。 (助かったと思うべきか) 半ば放心した表情で彼は思った。 (いや、あれはうたた寝の夢だ。  夢か幻だ。それに違いない。  ――違いないが……)  中途で放り出されてしまったように思えて仕方がなかった。  置いてけぼりにされた、そんな気持ちだった。 (どうして『この世のすべてを納める一句』なんてことを言ってしまったのだろう?)  そんなもの少しも信じていないことに、あの女は気づいていたに違いない。  だから――  彼は(うつむ)き唇を噛んだ。
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