再び旅人

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再び旅人

 がたっ。  と響いた硬質の音に、ぶるっと小さく身を震わせて、俺は目を覚ました。  うたた寝で舟を漕いだ拍子に、座席の前の折り畳みテーブルを叩いてしまったらしい。  まだぼんやりとする目を無理に開いて窓の外を眺めてみると、列車は黒曜石のようにねっとりと黒光りする浜名湖の上を、まだ走り続けていた。  眠っていたのは、ほんの数秒の間らしかった。
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