学園長の苦悩とパパの顔

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 ガラナの絶叫がグラウンドに響き渡ってから、2時間と30分後。 「パパ、今日も遅いなぁ」  自宅へと帰ってきたあたしは、着替えも晩ご飯も済ませて真っ白なソファーでくつろいでいた。  職業柄、パパの帰りが遅いのはほとんど毎日なんだけど、今日は特に遅いし連絡もない。慣れているとはいえ、パパは車椅子なんだから心配なのよねぇ。 「電話してみよう」  カラフルなストラップがたくさん付いたケータイを取り出し、アドレス帳から“パパ”を選んで電話をかける。  プルルル……プルルル……  10回目のコールを聞いたところで、あたしは諦めて家を出た。疲れのあまりどこかに躓いてこけて動けなくなってたり、堕天使に襲われていたり。嫌なことはどんどん浮かんでくる。 「電話にも気づかないなんて、何かあったのかしら……」  向かったのは、家の隣の紅華学園。あたし達の学校。学園のすぐ隣が家なんて最高でしょ?なんて、足が悪いパパのためよ。 「あ、電気がついてる。やっぱりまだ仕事してるんだわ」  校舎の、1か所だけ明かりがついた部屋を目指し、校門を飛び越えて校舎の中へと足を踏み入れる。堂々と不法侵入、問題ないわ。気にせず進んでいく。  パパがいる部屋はここ。4階の“学園長室”よ。足が悪いのに4階なんてって思うでしょ?パパがわざと、「家が隣だからこれくらいは苦労しないと」って。でもエレベーター完備。
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