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丘の上にはベンチがあり、そこからは宇宙の景色と小さく月が見える。モルゲンはそのベンチに座り、手に持っていた銃をベンチに立てかけた。
背中を丸め、ため息を吐く。
「はぁ、親は、子供は、彼女は、どこへ、どこへ行ってしまったんだろう」
誰に言うでもなく、小さく呟いた。
あの家にいたであろう、家族を思い出す。本当はわかっていた。あの家はもうないということが。遠い星の真似事をしていることなど、とうの昔から知っていたはずなのに。
この星の生物は、性別などない。増やし方は、微生物などの単細胞生物と同じ生物もいれば、機械によって、人工的に「家族」を生み出す生物もいる。そういう星なのだ。とても残酷で愚かだ。しかし、「家族」を愛しているこの星にとって、かけがえのない存在。それが、戦争によって壊されてしまったためか、モルゲンのように幻覚を見たり来るって死ぬ生物もいた。
そういえば、とモルゲンは思い出した。
一度死んだ生物は、月に還る。という話を、どこかで耳にしていた。本当かどうかわからない。しかし、会いたい。
この星ではその術があった。
月に行く方法がある。とても簡単だ。
その場で、強く念じれば、そこへ行ける。
どこでもいける。
強く、強く強く念じれば、その場所へ行ける。
でも、会える保証はないらしい。
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