待ってた

8/15
前へ
/37ページ
次へ
家に入って、今までと違うことが起きた。 「玲子、こっち向いて」 智也の方へ顔を向けたら、頭を低くした智也が近づいてきて、唇にキスをされた。触れただけの軽いキス。 驚きのあまり、玲子は倒れそうになるくらいにめまいがして、体をぐらつかせた。 「おっと!」 ぐらついた玲子の背中に手をまわして、倒れないように自分の方へ引き寄せた智也。 智也の胸に抱かれた玲子は、戸惑っていた。全身の毛穴から汗が噴き出してきた。 ーーー智也とキス? 嘘、信じられない。 「大丈夫か? 玲子。驚いた?」 「お、驚いた。だって……」 先に靴を脱いだ智也が、 「俺の肩に手を置いて」 玲子の手を肩に置かせると、しゃがんで玲子のヒールに手をかける。 「ほら、脱いで」 「智也、大丈夫だから、自分で脱げるわ」 「いいから」 智也に言われるまま、智也に足首を触られて体に電流が走るようだった。 ーーー恥ずかしい。これ以上は、きっと無理だわ。 部屋に入って、いつもみたいにコートを脱ぐつもりが腕が引っかかっていた。 すぐに智也が来て、優しく玲子の後ろからコートの袖を引っ張ってくれた。 「ありがと……」 玲子を見つめる智也に、玲子は固まって見つめ返した。 伸びてくる腕に玲子は、ただ操り人形みたいのように、されるがままに動いていた。 再び、智也に抱きしめられていた。首すじのあたりに智也の甘い息づかいを感じた。 「なんで今まで我慢できたんだろ。こんなに魅力的な玲子のすぐそばにいたのに」 智也の唇が、首すじに触れた。 「智也、あの……」 熱くほてる体が、自分でも恥ずかしいと感じた。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加