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家に入って、今までと違うことが起きた。
「玲子、こっち向いて」
智也の方へ顔を向けたら、頭を低くした智也が近づいてきて、唇にキスをされた。触れただけの軽いキス。
驚きのあまり、玲子は倒れそうになるくらいにめまいがして、体をぐらつかせた。
「おっと!」
ぐらついた玲子の背中に手をまわして、倒れないように自分の方へ引き寄せた智也。
智也の胸に抱かれた玲子は、戸惑っていた。全身の毛穴から汗が噴き出してきた。
ーーー智也とキス? 嘘、信じられない。
「大丈夫か? 玲子。驚いた?」
「お、驚いた。だって……」
先に靴を脱いだ智也が、
「俺の肩に手を置いて」
玲子の手を肩に置かせると、しゃがんで玲子のヒールに手をかける。
「ほら、脱いで」
「智也、大丈夫だから、自分で脱げるわ」
「いいから」
智也に言われるまま、智也に足首を触られて体に電流が走るようだった。
ーーー恥ずかしい。これ以上は、きっと無理だわ。
部屋に入って、いつもみたいにコートを脱ぐつもりが腕が引っかかっていた。
すぐに智也が来て、優しく玲子の後ろからコートの袖を引っ張ってくれた。
「ありがと……」
玲子を見つめる智也に、玲子は固まって見つめ返した。
伸びてくる腕に玲子は、ただ操り人形みたいのように、されるがままに動いていた。
再び、智也に抱きしめられていた。首すじのあたりに智也の甘い息づかいを感じた。
「なんで今まで我慢できたんだろ。こんなに魅力的な玲子のすぐそばにいたのに」
智也の唇が、首すじに触れた。
「智也、あの……」
熱くほてる体が、自分でも恥ずかしいと感じた。
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