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ーーーどうして、私なんかのそばにいるの? 好きになんかならないのに。
西のたくましい胸の筋肉を肩に感じた。冷たい西の耳が玲子の頬に触れていた。
「お姉さんは、あんたのままでいていい」
「…どういうこと?」
「今までみたいに智也さんに会えばいい。今までと違うのは、俺もお姉さんのそばにいるっつうことだけだ」
「どうして? 私は、智也しか好きじゃないのに」
「心配するな。いつか、俺の顔を智也さんの顔より先に思い浮かべる日が来るから」
ーーー何言ってんの? 来るわけない。
急いで西に預けていた体を離すため、玲子は両方の手で強く西の胸を押した。
「思い通りになってたら…悩まないわよ」
「お姉さんは、そうかもしれないけど。なんせ俺は有言実行の男だから」
ふっと西が微笑んだ。
ーーー絶対に西の女になんかならない。でも…私は、さっき西にキスされた。抵抗さえしなかった。
記憶をたどるように、玲子は自分の唇に指先で触れた。
「どうした? 」
「なんでもないわよ!」
全身の血が沸騰するほどに玲子の体は熱くなった。今になって西とキスして西が慰めるように目の周りにもキスしたことを思い出してしまっていた。
ーーー私、なんで拒まなかったんだろ。
「なあ、腹減った。そのイチゴ食うか」
ーーーイチゴ。智也のくれたイチゴ。
「これは、ダメ。智也がくれたんだから」
イチゴの入ったビニール袋を隠すように抱えた。
「だろうな。他に食いもんないならさー」
ニッと企んでるみたいに笑って、西は玲子の足の先からふくらはぎ、太もも、腰、胸、顔とじっくり眺めた。
ギラついた西の目に嫌な予感が走った。
「ひゃっ!」
急にソファに倒された玲子。
玲子の肩を押さえて、西は玲子のひたいに自分のひたいをくっつけた。
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