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上から、じっと玲子を見おろす西。
切れ長で黒目の多い瞳は、玲子の瞳にしつかりと向いている。
「お姉さんを……」
少しの間、西は、じいっと玲子を見つめていた。
少ししてから!ひたいを離して西は口角を上げた。
「やーーめた」
「え?」
「俺は、有言実行の男だから。言ったらその通りにしないと収まりがつかなくなっちまう」
体を起こして、西はソファから腰を上げた。
「さーてと、そろそろ俺は帰るよ」
「はぃ?」
不思議そうに体を起こす玲子をよそに、西は着ていたジャージをつまんで見せた。
「これ、しばらく借りる。あ、それと…」
また、ソファにどっかりと腰を下ろすと西は玲子に向き合った。
「週末、空けとけよ」
「どうして? 」
やや不満そうな表情をする玲子の顔に西はぬっと顔を近づけた。
「週末も会いたいから」
壁にかけてある丸い時計の普段は気にならない秒針の音が、大きく聞こえていた。
西の言葉に玲子は驚いていた。
「理由にならない?」
「でも……」
ーーー何故、西の為に週末を空けるの?
智也と会えるかもしれないし。
智也が西と玲子の付き合いを望んでいる。改めて知った今でも玲子が智也を想う気持ちは変わらなかった。
ーーー智也が好き。でも、智也は私と西が上手くいく事を望んでる。西と上手くいかないと言えば、違う誰かをまた紹介されてしまう。それなら……。
「わかったわ。次の週末は空けとく」
ーーーそれなら、全てを知っている西が相手の方がマシかも知れない。それに、西は智也と今まで通り会っていいと言う。私にとって好都合だ。
「ふーん。なんか割り切ったみたいだね」
「なに?」
「化け猫みたいだな、お姉さんって。まあ、いーけどさ、ようやく俺を使う気になった?」
ーーー使う。そうだ。私は西を使って隠れ蓑みたいにするつもりだ。今まで通り智也を好きでいるため。智也の側に居座るため。
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