待ってた

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仕事中、何気なく電話で上司に報告をしている山崎を眺めた玲子。 ーーーはためからは、いつも通りの山崎さん。 でも、もしかしたら山崎さんは私に対して怒っているかもしれない。ひょっとしたら、あの女! ふざけんなよ。って恨んでるかも。 人は、見た目じゃ考えてることまで、わからない。 次に玲子は、バイトの子に指導しながら時折、小声で話し笑い合う瞳を見た。 ーーーいつも、さばけていて明るい瞳。楽しそうにしてるけど、本当は思ってるはず。山崎さんを本当に好きなら……なんで山崎さんは、私じゃない人、よりによって、なんで玲子なんだろうって。 いや、そんなこと全く思ってないかもしれない。 でも、瞳の気持ちの真実は見ていてもわからない。 玲子は、フロアの人達を見まわした。 ーーーどの人もきっと、いろいろ抱えてる。家族との関係にギクシャクしたり、恋人と上手くいかないとか、お金が足りないとか、仕事のこと、病気の悩み……。 それでもみんな働いてる。今日も明日もきっと、その先も。 パソコンを前にして、文字を追いながら玲子は西の腕にあった刺青を思い出していた。 ーーーあの人にも、いろいろあるのかな? あるわけないか。ただのサラリーマンの皮を被った極道だ。乱暴だし、黒い服の男に護衛みたいに守られてたし。 どっかの極道の跡取りとか、そんな類いの人だ。あんな人とは関わらない方がいいに決まってる。 何度、襲われてるんだか。 会ったばかりなのに。 玲子は、バッグを手にしてファスナーを開けた。 中に入れているスマホを手にした。 画面には、着信もメールの受信をした証拠の数字も何も表示されていない。 いつもの待ち受け画面そのままだ。 ーーーキスしたぐらいの女との約束は、破ることにしてるのかしら?! 信じられない! 玲子は、昨日の帰り際にした西との会話を思い出していた。
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