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不可思議な思い
◎不可思議な思い
映画館の近くにあるダイニングバーに来ていた。壁面にウォータースクリーンがあり、映画が映っている。
ゆったりとした雰囲気の中でソファに身を預けながら、西はハートランドを飲んでいた。
玲子は、ラムベースのショートカクテルをオーダーした。
「お姉さん、酒強いね」
「あ、そうね……」
智也に付き合って出来るだけ長く飲みたくて、酒に強くなっていった。全ては、智也の為だ。
席も離れているし、映画から流れる音楽やセリフのおかげで周りの人たちが気にならないで酒を楽しめた。
「そろそろ、お姉さんの質問に答えてやるよ」
「質問?」
「そ、俺の刺青の話」
「模様のことね」興味津々という感じで体を乗り出してくる玲子。
「お姉さんの見たのは、虎」
「虎?」
「腕には虎を彫ってある」
「背中は?」
その質問にソファにもたれたままの西が鼻で笑った。
「お姉さん、そんなの聞きたいの。変わってんなぁー。背中には、あいにくいれてねぇし。……俺は、入れる気だったんだけど。もう一頭、翼のある虎と竹を」
西の言葉に玲子は、翼のある虎を思い浮かべてみた。
ーーー万能そうね。強い虎に翼が生えてるなんて。でも、この人の場合、やっぱり暴力団的な人たちと関わりがあるから刺青なんか入れてんのかしら。
深く腰掛けて、無表情で語る西。玲子は固唾を飲んで西の話に耳を傾けていた。
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