“い”『イメージチェンジ』

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「失恋しても泣けないんだよなぁ」  しっかり落ち込んではいる。  失恋に慣れすぎてしまったのだろうか。それとも、まだ本気で恋をした事がないのか。 「本気の恋って……?」  漫画やドラマであるような、どんな障害をも吹き飛ばしていくような激しい恋が本気の恋?  でも現実でそんな恋なんてあり得るもの?  そんなに苦しんでまでする恋なんて――。 「あれ? 小野(おの)?」  突然声をかけられて、私は驚きながら振り返った。 「あ、杉元(すぎもと)くん……!」  彼だ。  私の好きな人。  私が(あきら)めなければならない相手。 「誰だか分かんなかった。へぇ、長いよりずっといいじゃん。似合ってるぜ」  そう言って、にっと笑うその笑顔が今はつらい。  諦めなければならないのに、その気持ちに反するように、私の胸は高鳴ってしまう。 「へぇ、髪型って大事なんだな。なりたい髪型より似合う髪型をした方がいいって事が、よーく分かったぜ」 「そ、そんなに似合うかな?」 「俺は凄く良いと思うぜ。驚いた」  そう返しながら、杉元くんが私の顔をじっと見る。  私はどこを見たらよいのか分からず、たぶん不自然に視線を泳がせていたと思う。 「小野って、結構……」 「え?」     
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