問題だらけの私たち

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 ふたりの男を天秤にかける日々に終止符がうたれたのは、ある日突然だった。 ある日、あたらしく男性患者が入院してきた。30歳くらいの大柄な男で、患者たちに対し、妙に馴れ馴れしい奴だった。とくに、女性患者に対し。  私はその時、洗面所で歯を磨いていた。そこに、例の男がやってきた。例の男はニヤニヤしながら、私に話しかけてきた。名前はなんというのか、今いくつなのか、どこ出身なのか。  男はその馴れ馴れしさからほとんどの女性患者たちから敬遠され、無視されていた。私もそれにならい、無視を決め込むことにした。と、男は突然私の真後ろにたった。そしてこともあろうに、私のお尻を触ったのである。  「ちょっと、なにするんですか!」  その時だった。洗面所の鏡にもうひとり、男がうつった。霧島だった。  霧島は何もいわずにツカツカとこちらに近づいてくると、男に殴りかかった。男は鼻血を流しながら床に転がった。霧島は男に馬乗りになるとさらなる攻撃を男に与えた。私は怖くなり、看護師をよびにナースステーションに走った。  結局、男は厳重注意、霧島は一週間ほど保護室にはいった。保護室から開放された霧島は、私の顔を見るなり、怖い思いをさせてすまなかったと謝った。きみが汚されるのが我慢できなかったと霧島は言った。  私はというと、今回の件ですっかり霧島が怖くなってしまった。普段は穏やかだけど、キレると恐ろしいギャップ。やっぱり私は氷川をとるべきだ。私の心は決まった。  霧島も霧島で思うところがあったらしく、もし関係を解消したいなら、してもいい、と提案してきた。そしてその提案に私はのった。これからは、よき友人として付き合おう、ということになった。これで、全ては解決したように思えた。  ところが、そうは問屋がおろさなかったのである。
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