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「霧島さん、これって・・・。」
なるべく平常心を装いながら私は言った。
霧島が口を開く。
「俺のやつとお揃いなんだ。びっくりしただろ。」
私はうなづいた。
霧島は続けた。
「なあ、俺達、もう一度やり直せないか。もう二度と怖がらせることはしない。君のことが忘れられないんだ」
肌が粟立った。この人は、まだ私のことを思い続けていたのだ。が、私には氷川がいる。それに、霧島だって妻子がいるのだ。私は言った。
「思ってくれてありがとう。でも、霧島さんには奥さんと子どもがいるでしょ。やっぱり結婚している人と付き合うのはちょっと・・・。」
「もし俺が結婚してなかったら、付き合いたい?」
霧島が真剣な目つきでこちらを見ている。
「結婚してなかったらね。」
私は答えた。
「そうか・・・。」
霧島が残念そうにつぶやく。そして続けた。
「でも友達付き合いはしてくれるんだよね?」
「う、うん。」
少し硬くなりながら私は答えた。
「わかった。」
夕暮れがせまっていた。霧島が車を発進させる。私たちは帰路へついた。しばらく走ると、いつも待ち合わせにつかっているコンビニエンスストアの看板が見えてきた。コンビニにつくと、霧島は、駐車場の端の目立たないところに車を停車させた。
と、いきなり霧島の腕が伸びてきた。あ、という間もなく、霧島に抱きしめられる。
「ごめん、我慢できない」
低い声で霧島がそういうと、彼は私の唇に口づけたのだった。
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