防火区画

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防火区画

 つまりは、そういうことか……。  今日、俺は駅のホームで、見知った顔の男を見かけた。こちらが電車に乗るのと入れ違いに、たまたま同じドアから向こうが降りてきて、すれ違う形になったのだが、明らかに向こうはびっくりした様子だった。それはそうだろう。こっちもこんな所で彼に出会うとは思ってもみなかったのだから。  三か月ほど前のことだ。  長年住み慣れた地方都市を離れて東京に出て来た俺は、まずは落ち着き先を探すために、不動産屋めぐりをしていた。  初めての東京はあまり事情も分からず、物件サイトで探しても、数が多すぎてかえって途方に暮れてしまう。当面時間もあるので、ここは地場の不動産屋に飛び込んで、対面で話を聞きながら探すことにした。  利便性を考えると、やはり人が多くて大きな町がいい。一方、金に余裕は無いので、予算は限られている。その点は、広さをある程度犠牲にするしかない。まあ、男の一人暮らしで、家財も殆ど無いし、確かに間取りは小さくても良い。  ふらりと飛び込んだ駅前の小さな不動産屋で、ニーズを手短に説明し、候補を挙げてもらった。     
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