彼女の口癖

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ーーその夜。 彼女が寝たのを確認して、僕はその隣でノートパソコンを開いていた。 「本当に、この毎日は幸せだ……。」 そう独り言を零しながら、僕はとあるファイルを開く。 その瞬間、一瞬だけど視界の端にノイズが走った。 そういえば。 これを読んでいる皆んなにはある疑問が過っているだろう。 そう、 そもそもこの1週間で、あんなにも異常気象が起こっている事についてだ。 それは何故? 何が起こっているの? 答えは簡単。 全部僕のせいだ。 最初らへんに嵐の日の話しをしたと思うけど、 あの嵐の日だってそう。 あの時、僕は【質問】をしたんじゃない。 “聞きたいがために【嵐】にしたんだ。” そういうふ風に、僕が。 書き換えたんだ。 分かりやすいようにまとめると、 1週間のうちに、都合良くコロコロと変わる天気。 それなのに全て知っていたかのように振る舞う僕。 でも、もし、 それら全てを僕が操作しているんだったら? …………もうそろそろ察しが付くだろう? 「……。」 パソコンの機械音が冷たく部屋を包んでいる。 僕は慣れた手つきでそのフォルダを開くと、中のイベントシステムに入った。 そこには、日付と共に、 晴れや大雨。真夏日や春一番などの文字が羅列している。 「明日は何日和にしてくれるかな。」 僕も、たまに限度を間違えてやりすぎる時があり、 あまりにもそれが過剰だと、流石にゲームバランスが壊れかねないので、あくまでもここは慎重に。 「でも、流石にイタズラしすぎたよな。」 ふと今日の朝を思い出す。 落ち込んではいなかったものの、やはり意地悪は程々にしなければ。 この世界でたった一つ、 彼女だけは思い通りにできない。 だからこそ、 彼女の 明るさに 可愛さに 振る舞いに 全てに。 興味が尽きないけれど。 「……明日こそはピクニックに行こう。」 隣で静かな寝息を立てている彼女に、そう微笑みかけて。 僕は明日の日付に ピクニック日和 と、そう書き込んだのだ。 さぁ、 また今日も、何千回と繰り返された幸せな日々をロードさせよう。
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