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「ねぇ、リラ」
呟くのは一体これで何度目だろうか。物心ついた時から共に過ごしてきた彼女の名前を呼ぶ。隣に座る彼女は、燃え盛る夕陽を見つめたまま答えた。
「なに?」
「もしも、この世界が明日終わってしまうならどうする?」
どことなく憂いげな面持ちのリラに尋ねた。別に理由などなく、単純に気になっただけだ。この抽象的な問いに、『アンドロイド』の彼女はどう答えを導き出すのかが知りたいだけだ。
「どうもしないわ。いつも通り過ごすと思う」
「そうなの?何かしたいこととかないの?」
「何もないわね。やりたいことは、だいたい貴方のおかげで達成できているもの」
「……そっか」
夕映えを取り込んだ茶色の瞳は、静かな輝きを宿して揺れる。むしろやりたいことが達成できているのは僕の方だと答えれば、彼女は小さく笑んで目を伏せた。
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