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「…?どうかしましたか?」
「…いえ、何も」
驚いた表情は、瞬く間に消えたので、多分俺の見間違いだろう。
そう自己完結し、深くは聞かず、問題用紙をコピーしてから生徒会室を出る。
コピーをしている間に芹川や永山、阪原君は先に帰ってしまった。鍵当番である旭南君と別れ、必然的に浦崎先輩と帰る事になった。
……それにしても、いつまで浦崎先輩は肩を組んだままなのだろうか。俺そろそろ疲れたんだけど。
「そっれにしても疲れたなー、勉強会とか三年の俺じゃ教えはするけど教えて貰えはしねーしな」
「言い出しっぺの先輩が言う事じゃないですよ。それ」
「疲れた時には、甘いもんだ。ほい、今日の俺のおやつ、チョコレート」
ポケットの中を探ったと思うと、取り出したのは一口サイズのよくあるチョコレートだった。
「ちょ!これ溶けかけじゃないですか」
「遠慮せずに食えよー」
「先輩の体温で溶けかけたチョコレートとか…」
「おーおー、そんな嬉しそうにすんなよ」
「この顔が嬉しそうに見えるなら眼科いった方が良いですよ」
「大丈夫!視力は1.5位ある。目、良いだろ?」
そういうことじゃなくて!と思いつつ、貰ったチョコレートを口に含んだ。…甘い。
「……んで、どーだった?今日は」
「んぇ」
チョコを食べていた所為で変な返答をしてしまう。
唐突に聞いてきたその質問に、戸惑いながらも答えた。
「風紀委員室での事ですか?そうですね、二週間前にしては、肉体的というより精神的な疲労が見て取れましたが、先輩が怯えるほど酷くは無かったですね」
「怯えてはいねーよ。って、そうじゃなくて!勉強会の事に決まってるだろ、俺が聞いてるのは!…せっかく旭南と一緒にしたんだから、親睦の一つや二つくらい深められたか?」
「親睦に一つや二つなんてありませんよ。…大体、彼は頭が良いので『一緒に努力して良い点取って、その喜びを分かち合って絆を深める』みたいな事、出来そうにないと思うんですが」
「…俺、そんな事して絆深めろなんて一言も言ってない」
「え、そういう事じゃないんですか?」
「違うな」
「じゃあどういうつもりで…」
「いや、普通に話すきっかけ位にはなるだろうと」
…マジか。
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